番外編

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「何してたんだ?」 しばらくしてこちらに来た優ちゃんに、渉が少し不満そうに声を掛けた。 それに対して「ごめん」と優ちゃんが小さく呟く。 そのやり取りを見て、俺は少し不安になった。 京が初めて興味を持った女は、渉の女? 龍神会の若頭の京と、藤堂組の若頭の渉。 一人の女でも争いなど、できれば避けたい。 俺は不安な気持ちを抑え、いつものような口ぶりで尋ねる事にした。 「なんや、えらいべっぴんさんやなぁ。早く紹介してやぁ」 暗闇では意味を持たないサングラスを外し、渉の横に立つ優ちゃんを覗き込む。 綺麗な顔が引きつるのが見えた。 「やめろ秀。怖がってる」 優ちゃんの変化に気が付いた葵さんに止められる。 「なんでや!葵さんの方が何考えてるかわからんから怖いやんけ!」 葵さんは昔からそうだ。 顔や口調に合わず、さらっと残酷な事をする。 俺は昔からこの人が苦手だ。 気持ちを全く感じ取れねぇ。 「・・・そうじゃなくて、初対面の相手にそんなに見られたら嫌だろ?」 「あぁ、そーいう事か!悪かったな」 葵さんは呆れた表情で俺を見ていた。 「そんで?この綺麗なお嬢さんはなんなん?葵さんにだいぶ懐いてるようだけど?」 視線を渉に向け尋ねる。 優ちゃんは俺から1歩さがり、葵さんの後ろから俺の事を覗き見ていた。
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