番外編

12/34
前へ
/224ページ
次へ
「なんや?ほんま珍しいなぁ! 京、この嬢ちゃんに惚れてしもーたん?」 俺は渉を煽るように京に尋ねた。 チラッと渉に視線を向ければ、驚いた表情のあと複雑な表情を浮かべている。 渉にとっては、ただの幼馴染みやなさそーやな。 「おい、なんか言えや」 「だから、お前は煩せぇ」 無言でいた京がとうとう口を開く。 「さっきから、煩いってなんやねん!」 「てめぇら、いい加減にしろ!」 言い合いを始めた所を葵さんが止めに入った。 「喧嘩なら他所でやれ、お前らは何しに此処に来たんだ! それに、優さんを困らせるんじゃねぇ!」 「・・・すんません」 久しぶりに聞く葵さんのドスの効いた声と鬼のような顔。 その様子に優ちゃんは驚いてるようだった。 「葵さん・・・、葵さんの変わりように優ちゃん怯えてるわ」 葵さんは、俺の言葉にハッとした後、瞬時に笑顔を作り優ちゃんに向けた。 「・・・やっぱ、葵さん何考えてんのか分かんねぇや」 心の中で呟いたつもりが、声に出てしまったようだ。 俺には冷たい視線が向けられた。 「ねぇ、渉・・・ この人たちは?」 優ちゃんのおかげで、葵さんの突き刺さるような視線が俺からそれる。 俺は気をとりなおし、優ちゃんに自己紹介をすることにした。 「せや、俺たちの自己紹介まだやったなぁ! 俺は相良 秀人や! よろしくな、優ちゃん!」 「こっちの無愛想なヤツは・・・」 「龍神 京だ」 俺を遮って、京が自ら名乗る。 「なんや、自分から名前教えるんなんて珍しいやんけ」 「え?龍神って・・・」 「あぁ、京はうちの組の若さんや」 「え?組?」 優ちゃんは俺等について何も知らないのか、目を丸めて驚いていた。
/224ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4436人が本棚に入れています
本棚に追加