番外編

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「なんや、何にも知らんの?」 俺は渉に尋ねた。 「はい。俺の家の事は知ってますが、詳しくは教えてません・・・。今日初めて龍神について知りたいと言い出したので、連れて来ました」 「そーゆう事か。・・・せやから京も興味もったんやなぁ」 俺は少し驚きながらも、京が何故優ちゃんに興味を持ったのかを一人で納得した。 「んじゃ、何も知らん優ちゃんに俺が特別に教えてやる!」 普段の俺ならこんなことしない。 何故か、初めて俺等の事を知って欲しいと思った。 「せやなぁ、龍神連合会と藤堂組の事は知ってるんやろ?」 「・・・名前だけ」 「マジかいな!優ちゃんこの街の人間ちゃうの?」 「いえ・・・この街の人間です」 「それなのに知らんの?本当珍しいなぁ・・・俺等の事も知らんし」 「・・・すみません」 「いいんや、謝らんといて!俺等と普通に接してくれんのが嬉しいんや!俺等を知ってて寄ってくるようなヤツは肩書きを求めたような人間ばかりや・・・」 近寄ってくる連中は本当の俺等を知ろうとはしない。 奴等が求めるのは、金と権力。 俺等の名前は、一つのブランドとなっている。 _____この子なら・・・ あの京が目を付けた彼女なら、本当の俺等を知ってくれるかもしれない。 そう思った俺は、続きを車で教えると優ちゃんに伝えた。 京以外の奴を乗せて走るなんて初めてだ。 「いえ、優は俺の車に・・・」 俺の提案に渋る渉。 そんな俺等の会話を大人しく聞いていた京が口を開いた。 「渉・・・優の事は俺がちゃんと守る」 京の口からこんな言葉が出てきたのは初めてだ。 俺はこの時、京の気持ちと覚悟を聞いた気がした。
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