番外編

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◆◆◆◆◆ 渉が総長仕様の特攻服を身に纏い、暴走の始まりの合図を出す。 地が震えるような、腹の底に響くエンジン音と歓喜の声。 久しぶりに聞く音に高揚感を感じた。 「んじゃ、行くで?」 車に乗り込み、後ろに座る京に声をかける。 その隣には優ちゃんが不安そうに座っていた。 「あぁ」 京の返事と共に車のエンジンをかける。 車内に響くマフラー音。 クラクションを軽く押せば、夜空を劈くような音が鳴り響いた。 「よっしゃあ! 出るで!」 シフトをパーキングからドライブに入れ、右足をブレーキから離していく。 三人を乗せた車が、今ゆっくりと動き出した。 未だ多くの車や人の行き交う通りを集団で走り抜ける。 夜空に響く爆音や声援が心地良い。 「そんじゃ、説明の続きしよか?」 俺はミラー越しに、少し緊張の解けた優ちゃんを確認し声を掛けた。 「まず、龍神やな・・・。とりあえず渉の前の総長が、そこの京や」 「え?京さんが?」 「そして俺が副総長!」 「お二人とも龍神にいたんですね」 「そーや!そんで、今俺等は龍神会の人間や」 「龍神会?」 「あぁ、極道。 ヤクザや」 「ヤクザ・・・」 優ちゃんが小さく呟く。 「俺が怖いか?」 今まで黙ってやり取りを聞いてただけの京が優ちゃんに静かに問いかけた。
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