番外編

15/34
前へ
/224ページ
次へ
「・・・怖くない」 「そうか」 小さきながらもしっかりとした優ちゃんの答え。 それを聞いた京は満足そうに優しく微笑みかけた。 「ほんま、優ちゃん変わった子やなぁ」 優ちゃんの返答に俺も安堵する。 「龍神会の若頭って、京さんなんですか?」 「そや!優ちゃん正解!!」 「渉の・・・。 藤堂組とは?」 優ちゃんが不安そうに尋ねてきた。 「あぁ、藤堂組は龍神組の分家にあたるんや」 「分家?」 「まぁ、簡単に説明すると、龍神会はこの国の1.2を争う大きな組なんよ。龍神会がトップ、藤堂組はその下の組織になるんや」 「・・・。」 「まぁ難しいわなぁ。 そこはあんま知らんくて大丈夫や!」 色々と難しい世界。 今はまだ知らなくていい。 そう思いながら視線を再びミラーに向け、気になっていた事を優ちゃんに尋ねる事にした。 「優ちゃんはなんで今日来たん?」 「・・・渉の今を見たくて」 優ちゃんがゆっくりと口を開く。 「渉の今?」 「はい・・・。渉が龍神に入ってから遠くへ行ってしまう気がして、目を背けてたんですけど・・・このまま一人置いていかれてしまう気がして・・・」 「置いてかれる?」 「・・・一人にされるのが、怖いんです・・・」 優ちゃんは一呼吸を置き、絞り出すかのような声で続けた。 「・・・大丈夫だ」 車内に響く低い声。 「優を一人にはしない」 京は優ちゃんの頭を撫でながら、優しい口調で呟く。 こんな京を見た事のない俺は目のやり場に困り、ミラーから視線を逸らした。 すると、目の前の交差点の信号がちょうど変わろうとしている所だった。
/224ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4436人が本棚に入れています
本棚に追加