番外編

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多くの車が行き交う交差点。 このまま進めば、俺らが信号を通過する時には、赤に変わってしまう。 周りの奴らに迷惑をかけようが、俺らは止まる事はしない。 そうなれば、特攻、涼の出番だ。 「優ちゃん!そろそろ特攻の意味がわかるで」 俺は後ろに座る優ちゃんに声をかけた。 「っ、涼!?あぶないっ!!」 俺の声に視線を前に向けた優ちゃんは小さな叫び声をあげた。 「大丈夫だ。 見てみろ」 京の声が聞こえる頃には、丁度涼が交差点に突っ込んだ所だった。 行き交う車をものともせずバイクで突っ込んだ涼。 その後を追うように他の奴らも進み続ける。 夜空に響くブレーキ音やクラクション。 涼は騒がしい交差点のど真ん中で、片手を広げ車を停車させた。 完璧に赤信号となり、涼によってできた交差点を俺はアクセルを弱める事無く進む。 涼の横を通過する際、バイクにまたがったまま深く頭を下げるのが目に付いた。 「あいつも上手くなったなぁ・・・」 涼が龍神に入った当初、『はぁ!?んな事出来ねぇっすよ!』とぼやいていたのを懐かしく感じた。 「優ちゃん、今のが特攻の仕事や」 「・・・はい、突然の事に驚きました」 「そーやろなぁ。でもバイクの腕がないと出来ん事なんや。誰でも出来る事やない」 そう、誰にでも出来ることじゃない。 無茶な突っ込みをして、人生を変えてしまった奴を俺は知っている。 「そんな涼を誇ってやってくれって、涼の彼女に伝えてやってくれるか?きっと心配してるやろ」 少し過去を懐かしみながら、優ちゃんに伝えた。 「わかりました」 優ちゃんの返事を聞き安心したのも束の間、聞きなれた甲高いサイレン音が響き始めた。
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