番外編

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サイドミラーに目をやれば、くるくると回る赤色灯の灯りが遠く後ろの方に見える。 今日は龍神にとって久々に大掛かりな暴走。 警察が出てくるのも時間の問題だと思ってはいたが、思ったより早い。 楽しみは始まったばかりだというのに。 「チッ、もう嗅ぎ付けたか」 「・・・秀」 京が低い声で俺の名を呼んだ。 何も言わなくても言いてぇ事は分かる。 今、サツに見つかる訳にはいかねぇ。 「あぁ。優ちゃん、ちょっとスピード上げるから気いつけてな!」 俺はそれだけ言うと、アクセルを強く踏み込んだ。 一気に上がるスピード。 前を走る車やバイクをすり抜けながら追い越していく。 流れるライトやテールのライトが俺の興奮を誘う。 「わっ!!」 「すまんなぁ、もうちょっと我慢してくれ!」 左右に振られる優ちゃんは京に任せ、俺は運転を楽しんだ。 ◆◆◆◆◆ 暴走の列から抜け、走り続けた俺の運転する車は隣町まで来ていた。 ここまで来れば警察の心配はいらないだろう。 俺はアクセルを踏む足を緩め、スピードを少し落とした。 突如車内に鳴り響く携帯の着信音。 どうやら俺の携帯が鳴っているらしい。 相手は涼で、俺らの無事の確認と先に倉庫に戻っているとの話だった。 俺は電話を切ると、近くにあるコンビニに入り駐車場に車を停めた。 「悪かったなぁ、優ちゃん・・・大丈夫やったか?」 俺は後ろに振り返り、優ちゃんに声をかける。 「大丈夫です。・・・京さんが支えてくれてたので」 そう笑顔で答える優ちゃん。 「京が!?いやー、ほんま珍しいなぁ」 「・・・煩い」 京がこんなに分かり易い男だったとは。 普段ならありえない京の行動に声を上げ笑いそうになる。 「そや!渉達も無事逃げきって、倉庫に戻ったみたいやで」 俺は声を出して笑いたいのを抑え、優ちゃんに渉達の無事を知らせた。
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