番外編

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「チッ・・・」 車内に京の舌打ちが響く。 珍しくやたら機嫌が良さそうだった京は、優ちゃんが車から降りて行ったことにより機嫌が悪くなってしまったようだ。 鋭い視線が俺に突き刺さる。 何故こうなったかというと・・・。 買い物を終え車に戻った俺は、車内の異変に気づいた。 二人というか・・・、優ちゃんの様子がおかしい。 妙に落ち着きがないように見える。 ・・・なんかあったな。 俺は優ちゃんに買ってきたコーヒーを渡そうとした時に、ある物を見つけた。 優ちゃんの手のひらにある鈍く光るシルバー。 それは京が普段使っているzippoだった。 「京が人に物貸すなんて、珍しいな!」 俺にも貸してくれねぇのに。 「・・・やった」 「は?」 「・・・優に、やった」 やった?あの京が? 俺は耳を疑った。 「へぇー・・・京がねぇ・・・」 どういうわけで優ちゃんにzippoをあげたのかは分からないが、京が人に物をやるなんて話は今まで1度も聞いた事がない。 やっぱり京にとって、優ちゃんは特別か・・・。 そう考えると自然とニヤけてきてしまった。 「チッ」 ニヤける俺を見て舌打ちをする京。 その途端に、「タ、タバコ買ってきます!」と優ちゃんはドアに手を伸ばした。 「優ちゃん!!」 俺の声は聞こえていたはずだが、振り向きもせず車から降りコンビニの中へと走って行く優ちゃん。 こんな訳で、機嫌の悪くなった京と二人、車に取り残されてしまった。
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