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「なんや?まだ結構残っとるなぁ!」
目の前の見慣れた倉庫の前には、多くの車やバイクが並んでいた。
あれから優ちゃんと連絡先を交換し、コンビニの駐車場をあとにした俺ら。
車通りの少なくなった道を走ること15分弱で、暴走の出発地点、そして俺らと優ちゃんが出会った場所、倉庫の広場に着いた。
「着いたで!」
倉庫の真ん前に車を停車させ、後ろを振り向く。
そこには、「ありがとうございました」と丁寧に頭を下げる優ちゃんがいた。
優ちゃんが車から降りようと、伸ばした手がドアノブを掴むより早くドアが開けられる。
「・・・遅かったな」
車内に入り込む冷たい冷気と、渉の声。
それを確認した俺は、すぐさま外に出て渉の方へと向かった。
かがみ込み車内の優ちゃんの無事を確認する渉。
「お前は心配しすぎや!」
そう声をかけながら背中を軽く叩く。
すると渉は、冷めた瞳で俺を睨みつけてきた。
「・・・秀さん、なんで電話出ないんすか?」
渉は明らかに不機嫌な声と表情を俺に向ける。
「そや、なんやあの電話の数」
「秀さんがなかなか出ないからじゃないですか」
「にしても、掛けすぎやろ・・・ヒステリック起こした女みたいやったぞ」
そう言いながら渉の背を叩くが、今度は何の反応も返って来なかった。
「・・・早く降りろ」
再び車内を覗きこむ渉は、優ちゃんの腕を掴んだようだった。
「つっ・・・」
それは、先程のコンビニで男に掴まれた同じ方の腕。
「あ?」
渉は掴んだ腕を放し、優ちゃんから俺に視線を向けた。
「あー、渉に話あんのや。ちーっとあっち来てくれるか?」
「・・・わかりました」
怪訝な表情はそのまま頷く渉。
「優ちゃんは先に京と中入っててくれや。外寒いやろ」
「はい・・・」
優ちゃんの不安そうな返事を聞いた俺は、車から少し離れた場所に向かって歩き出した。
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