番外編

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「・・・この辺でえぇか」 車から少し歩き、街灯の側まで来て足を止めた。 今日はやけに風が冷たく感じる。 「秀さん、話って何すか?」 ポケットから煙草を取り出すと同時に、静かに後ろをついてきた渉が口を開いた。 「あぁ」 口に加えた煙草に火を付ける。 吸い込んだ煙を吐き出すと、瞬く間に風に乗って消えてしまった。 「まずは、優ちゃんの腕の事や」 「なんかあったんすか」 渉の眉間にシワが寄り、目つきが鋭くなる。 「途中コンビニ寄った時に優ちゃん声かけられとってな。そん時腕捕まえられたみたいなんや」 「チッ」 かなり小さかったが、舌打ちのような音が微かに聞こえた。 「すぐに気付いて止めたものの、俺がついててすまんかった。謝る」 「秀さん、頭下げないで下さい。何時もの事ですから。・・・それより」 渉の言葉に軽く下げた頭を戻す。 「他に話あんるでしょ?」 視線を元に戻せば、力強い瞳をした渉と目が合った。 「そんな話しならその場で出来た筈です。けど、あの場では話せない事があるんですよね?」 「あぁ」 どうやら渉も気が付いているらしい。 指に挟む煙草を口に運び、ゆっくりと煙を吸い込んだ。 「どうやら京は本気で優ちゃんに惚れたらしい」 俺の言葉を聞いた渉は何の言葉を発さず、視線を俺から空に移した。 「優ちゃんはお前の事を幼馴染みだと言っていたが、お前はちゃうんやろ?」 「っ・・・」 「優ちゃんの首筋にキスマーク付けたんお前なんやろ?」 再び視線を俺に戻した渉は驚いた表情をしていた。 「お前どうすんねん」 吸い終えた煙草を地面に捨て、新しい煙草を指に挟む。 「渉、俺だけには本当のこと教えといてくれや」 「・・・」 「別に脅す気はない。俺にとって京は大切な親友やし、渉も同じくらい大切な後輩や。せやから二人には幸せになって欲しい」 くわえた煙草にライターで火をつける。 吸い込んだ煙を吐き出すと同時に、いままで黙りこんでいた渉が口を開いた。 「俺は・・・」 拳をギュッと握り締めながら話し出す渉。 肌寒い風が吹く中、俺は静かにそれを聞き止めた。
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