番外編

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久々に龍神で飲む酒は美味かった。 ここは今でも俺が素でいられる居場所。 それは京も同じらしく、珍しく笑顔を浮かべている。 まぁ、今日は優ちゃんがいるからかもしれないが。 その優ちゃんも始めのうちは緊張していたようだが、今では笑顔で笑いあっていた。 それからは時間を忘れるぐらい皆で飲んで騒いだ。 「そろそろ帰るぞ」 酔いつぶれてその場で眠りこける連中が出始めた頃、渉がそっと優ちゃんに声をかけた。 「なんや優ちゃん!帰るんか!?」 「・・・はい」 「嫌や!!泊まっていき!一緒に風呂入ろーや!」 「えっ?」 冗談で言ったつもりだったのだが、どうやら完全に引かれたらしい。 「お前は黙れ!」 おまけに京からはグラスが飛んできた。 飛んできたグラスをギリギリで避けた俺。 グラスはそのまま地面に落ち、粉々に砕け散った。 「ちょ!危ないやんけ!!」 どうやら京は本気で怒ってるらしい。 ギラついた瞳で睨む顔を見て笑ってしまった。 「皆さん、今日はありがとうございました。楽しかったです!」 そう言う優ちゃんの表情はとてもいい笑顔を浮かべている。 数時間前の作り笑いは嘘のようだ。 京は優ちゃんの姿が見えなくなるまで、ずっと背中を見つめていた。 「よしっ!飲みなお・・・」 「秀、迎え呼べ」 渉と優ちゃんが倉庫から出たのを確認して、再び気合を入れた所で京に止められた。 「あ!?」 「俺らも帰るぞ」 「なんや!楽しみはこれから・・・」 「帰る」 「・・・」 先程まであんなに機嫌よくしていたのに。 優ちゃんが傍を離れた瞬間、京から笑顔が消えた。 なんと単純な・・・。 腕を組み、ソファーにどっしりと座る姿を見て諦めた俺は、携帯で組の奴等に連絡を取った。
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