番外編

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「あと10分程で来るとよ」 「あぁ」 通話を終え、携帯をポケットに戻す。 「涼、わりぃけど席外してくれるか?」 テーブルに置かれた煙草に手を伸ばしながら涼に声をかけた。 「わりぃな」 「いえ、失礼します」 頭を下げ離れてく涼を確認して、煙草を咥える京と向かい合う形で座った。 「京、これから優ちゃんの事どうすんのや?」 グラスに入った残りのビールを飲み干しながら京に尋ねる。 「渉の気持ちも気づいてんやろ?」 「・・・あぁ」 「優ちゃん、どうやらあの葉月さんの娘みたいや」 「・・・」 京も薄々感じていたのか、驚いた表情もせずただゆっくりと煙を吐き出した。 「渉は自信がねぇと言っていた。優ちゃんを幸せにする自信が」 俺は渉から聞き出した気持ちを京に伝えた。 「どうやら、この世界に巻き込む事を躊躇っているらしい。俺はそれを聞いて今更とも思ったんだが・・・」 幼馴染みとして一番近くで優ちゃんを見守ってきた渉。 少なくとも優ちゃんは他の同年代の奴らより、この世界について理解をしていると思っている。 まぁ、渉が過保護過ぎて外の世界を知らない事も多いようだが。 「京、お前が優ちゃんに惚れたんはよう分かった。けど、渉の気持ちを知った今、お前はどうすんのや?」 「・・・」 俺は少し意地悪な言い方をしたかもしれない。 けれど、渉の想いも知った俺はただそれを聞き逃す事は出来なかった 「お前は優ちゃんを幸せにする自信あんのか?」 「秀、誰にモノ言ってんだ?」 今まで黙っていた京の低い声が響いた。 「俺は優を幸せにする自信がある」 そう言い放つ京の表情は自信で満ち溢れていた。
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