番外編

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◆◆◆◆◆ 「優は俺の女だ」 それを聞いたのは翌日の事だった。 いつの間にか事務所から居なくなった京。 これ自体は珍しい事ではないのだが、携帯に連絡をしても繋がる様子がない。 もしかして・・・。 そう思い、俺は昨日教えてもらっていた優ちゃんの携帯へかける事にした。 「もしもーし、優ちゃん?」 受話器に向かって話し出す。 しかし返ってきた声は優ちゃんの可愛らしい声ではなく、聴き馴染みのある低い男の声だった。 『てめぇ、なんで優に電話してんだ』 「京!!やっぱり優ちゃんと一緒におったんか!」 やはり俺の感はあたっていたようだ。 連絡も無しに居なくなった不満を捲し立てるが、京は返事のひとつも返してこない。 「・・・おい、聞いとんのか?」 「うるせぇ。聞こえてる」 この質問には即答で返してきた。 それからは何時もの言い合いが始まった。 でかい声を出したせいか、事務所にいる連中がこちらを向いている。 『わりぃ、もう少し待ってろ』 会話の合間に聞こえた京の声。 どうやらそれは優ちゃんにかけた言葉らしい。 『秀、てめぇ勝手に優に電話してんじゃねぇよ』 再び京が低い声に変わる。 「は?別にいいだろうが!」 そのあとだった。 驚くべき言葉を聞いたのは。 『良くねぇよ。優は俺の女だ。勝手な真似してんじゃねぇぞ』 俺は言葉を失った。 『俺の女』 京は確かにそう言った。 京が優ちゃんと知り合ったのは昨日の事。 気付けば通話は切れている。 京の覚悟は聞いてはいたが、あまりの急な展開に驚いてしまった。
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