番外編

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「お疲れさまです」 事務所にいた若い衆の声が京の帰りを知らせる。 「おい京!どういう事やねん!」 座っていたソファーから立ち上がり尋ねるが、京は振り向きもせず奥の部屋へと入って行った。 俺もそのあとを追うように足を進める。 「・・・どうなっとんのや?」 部屋の扉を締めながら椅子に座る京に再び尋ねた。 「言った通りだ」 そう言うと、ポケットから煙草を取り出し、火をつけた。 「俺の女って・・・」 「優は俺を選んだ」 力強い瞳と上がる口角が京の気持ちを物語っていた。 「俺はこの先一生かけて優を守り、幸せにする。・・・お前はどうする?」 「あ?」 俺は何故問いかけられたのかが分からなかった。 そんな俺に気付いたのか、京は言葉を続けた。 「お前は渉を気にかけてるんだろ?」 そう言う京はジッと俺の瞳を見つめてきた。 確かに俺は渉の幸せも願ったが、最も大事なのは優ちゃんの気持ちだ。 その優ちゃんは京を選んだ。 そして京は優ちゃんを一生かけて守り、幸せにすると言う覚悟をしている。 「京、俺をなめんなよ」 俺も京に負けじとグッと瞳に力を込める。 「俺は龍神会若頭補佐や。若頭も、・・・姐さんも俺が守ったる」 優ちゃんを『姐さん』と呼んだ俺。 これは俺なりのけじめの付け方。 「京、よかったな。幸せになれよ!」 そしてこれは京の親友としての俺の気持ち。 その言葉を聞いた京は、「あぁ」と今まで見た事のない幸せそうな笑顔を浮かべた。
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