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竜騎士は目を疑った。自分の‘ジャンプ’は確かに決まったはずだ。現にスサノオの剣の刀身へとぶち当たった。それなのに、剣を貫いた感覚がない。いや、それどころか、剣にひびすらない。竜騎士の剣の切っ先はスサノオの剣の刀身に阻まれて、完全に止められていた。岩を砕き、地面をもえぐる‘ジャンプ’が完膚なきまでに防がれてしまった。
「俺がまさか奥の手を出さざるを得ないなんてな……。……‘鉄壁の構え’だ!」
竜騎士には、視えた。緑色の風がスサノオを取り巻くように囲み、まるでバリアのごとく守っているかのように。スサノオは両手に剣を持ったまま、勢いよく竜騎士を弾け飛ばす。竜騎士はなんとか地面に足をつき、背中から打つという事態を避けた。だが地に足をつけた瞬間、グラリと視界が揺らぐ。
(しまっ……!)
よろめき膝をついた竜騎士にスサノオは一歩一歩近づいてくる。
(くっ、動け、動け私の足よ!)
しかし意に反して足に力が全く入らない。気づけばスサノオは目の前にまできていた。竜騎士は見上げる形でスサノオを見た。逆光の影響でスサノオの表情は見えない。
死……………。
ドクンと心臓が高鳴る。恐怖で剣を持つ手が震える。スサノオが剣を持ち上げた。
「やめっ……………!!」
竜騎士の言葉をよそに、剣は空を切り裂いた。
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