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………………ガシッ。
漫画ならそんな擬音が描かれるぐらい強く手を握られた。力あふれるこんな握り方をする奴は誰だ? スサノオが微かに瞼を上げる。
「竜騎士……お前……」
「今、持ち上げ、て、やるぞ!!」
「馬鹿かお前!! お前まで引きずりこまれるぞ!!」
「そんなこというなら、手を、伸ばすんじゃぁ、ない!!」
(そりゃ……そうかもしんねーけどよ)
何も言い返せないスサノオが竜騎士の後方を見やると、スサノオの父が竜騎士の腰をガッツリ掴んでいた。
(親父……)
父の後ろには運営らしき人物が。その後ろには観客であろう人が前の人の腰を掴んでいる。頑張れー、頑張れーと応援まで聞こえてくる始末だ。
だが、スサノオは一向に引き上がらなかった。むしろ、そんな多人数が闇の引力に負けを喫していた。このままでは。
(クソ……全員引き込まれちまう)
「ぬおおおおおお……」
竜騎士の野太い声が覇気を出しているが、もう竜騎士の手が魔法陣の下へと飲み込まれかけている。スサノオはもう顔を出すだけで精一杯だった。
(仕方ねえ……)
スサノオは竜騎士の手を全力で振り払おうとした。
「!? 馬鹿、よせ!!」
「うるせーよ青海老が。てめえの暑苦しい手が汗でじめじめしてきて嫌なんだよ。とっとと離せアホが!!」
「離すものか! 貴様がなんと言おうと、俺は、俺以上の実力者を……って、ぐおおおおお」
いよいよだった。スサノオが完全に飲み込まれる。
まだ口が動く……か。ならば。
「竜騎士……お前」
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