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「つまり、こういうことか。ヨミ!!」
いかつい体格で、茶色の髭を生やしたおっさんが、ヨミと呼ばれた女の子にそう怒鳴りつける。ヨミは道場の冷たい床の上で正座して俯いていた。スサノオはさぶそーだなと思った。
「家の、大事な大事な家宝である魔法石を、勝手に持ち出したあげく、訳の分からないオカルトごっこして遊んでいたら無くしてしまったと! それも5個も!! そう言うんだな!!」
「違う!!」
ヨミはバッと顔を上げ、父親に潤んだ瞳を向けた。父の方は怯むかなと、思ったが表情は変わらない。
「何が違う、だ! どこが違うんだ」
「お父さん、あの魔法陣は本物だったの! ‘レア・ガチャー’は本当に光を放ってこの人を呼んだのよ!」
隣に某然と立ち尽くすスサノオにビシッと指差し、ヨミは父親に反対意見を述べる。スサノオはどうしていいかわからず、とりあえずそこに立ち尽くしているだけの選択を選んだ。
「すいませんね、娘のお遊びに付き合っていただいて」
「えっ? あ、はぁ……なんつーか……そうですね」
父親は柔和な笑みをこちらに向け、さっきまでの厳しい口調とはまるで別の優しい声でスサノオにそう言った。
ヨミは「なんで!?」みたいな顔を向けてくる。
「ヨミ! あんまりスサノオ君を困らせるんじゃあない!!」
困らせてなんか、と言おうとしたヨミに父親はゲンコツを食らわした。ヨミはきゅーと音を漏らし、頭を両手で覆う。
「ヨミは今日ご飯抜きだ! 勝手に魔法石を持ち出したことを反省しなさい!!」
「そ、そんなぁ……。なんでよなんでよ! あたしなんにも悪いことはしてないのに!!」
そう抗議するヨミに父親は耳を貸さず、「スサノオ君、行こう」とだけ言った。
「スサノオ、裏切る気!?」
なんの話だ。
はぁとだけ小さくため息を漏らしたあとで、ヨミの父親についていった。
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