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スサノオが道場から出ると、父親は扉を閉め、ガチャガチャと鍵をかけた。
「鍵、掛けちまうのか?」
「ええ。夜の九時までね。まああいつは変なとこで肝が座っているから、こんな罰じゃ屁でもないでしょうが」
にっ、と笑う父親にスサノオも苦笑いで返す。なんとなく分かる気がした。
足袋で歩く父親の足音は静かで、居間に向かう際スサノオの足音だけが無言の空間に響いた。ヨミの父親の後ろ姿は、スサノオのよりも大きく見えた。
「……すんませんでした」
「ん。何がだい」
「魔法石……新しく俺に使ってくれたんすよね」
「ああ、そのことか。いや、気にするな。あれだけの重症だ。魔法石というのはああいう時こそ使うものでね。使わなければただの飾りだ。それに、まだうちにはいくつか残っているしね」
スサノオは気を失ったあと、ヨミによってリアカーでヨミの家まで運び出された。ヨミの家は道場をやっているらしく、応急処置云々に関してはそれなりの心得があったらしいが、一目見て骨をやられていることに気づき、謎の回復力がある‘魔法石’と呼ばれる代物で全快まで治してくれたらしかった。ヨミが叱られる前にそう教えてくれた。
いい人だな、この人達。スサノオは心からそう思った。
「それよりも、スサノオ君。君に大事な話があるんだ」
きたか……。ゴクリと唾を飲む。
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