旅立ちの塔

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ヨミの母親が紅茶を入れてくれて、三人はそれを啜りながら話を進めた。その後の話でわかったことは、二つのドラゴン像が現れたのはどちらの時も治世が乱れていた時だったということだ。 「ドラゴン像が救った危機は、悪魔がこの世に現れありとあらゆるものを破壊し尽くそうとした‘カタルシスの危機’と、異常なまでの天候異変が引き起こした‘世界大飢饉’だ。勇者ベルセルクと豊穣神セレス、の歴史は誰もが知ってる有名な話さ」 ズズッ。紅茶を啜り、父親は一呼吸置いた。スサノオはその話を聞きながら拳を膝の上に置いて畏まり、今自分が置かれている現状の把握に必死で務めた。千年振りに現れた金色のドラゴン像。世界の危機を救ったヒーロー達。魔法石。自分の知らない歴史が蠢いている。常識が異なっている。 ……さっき食べた鍋の具が井の中でぐるぐると掻き回っている。理解し難い現実が目の前まで降りてきている。 馬鹿な……。不可解な事実が浮き彫りになっているが、だからといってそれをありのまま受け止めろというのか。無理だ。いくら俺が冷静沈着でイケメンの向かう所敵なしであっても、それを認めるほどの度量がない。 ぐにゃり。 視界が歪んだ。
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