旅立ちの塔

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「……理解したようだね」 父親の目を見た。それは見知らぬ流浪人を憐れむようなものではなく、実の息子を見るような暖かさがこもっていた。 「なんだよ……アンタ、言ってたじゃないか。ヨミがやったことは出鱈目だって。オカルトだって……」 父親は目を伏せた。母親の方もだ。それをみて、悟った。おそらく両親の方は魔法石を知らない下りで大方悟っていたのだろう。ヨミを道場に閉じ込めたのもそのためか。ヨミは本物の呼び出し召喚みたいなものをやってしまったと。 「俺、本当に異世界に来ちまったていうのか……?」 言葉にしてみても、あまり実感が湧かない。だが現実はそうだと責めたててくる。ドラゴン像が濁りのない瞳でこちらを凝視していた。 「ハハハ……マジかよ。ありえねえ。ありえねえことはありえねえって、昔どっかの漫画で書いてあったけどさ」 こればっかしは、と言う声はどんどん小さくなって両親には聞こえなかった。つまりここには、友達も、父も母も、学校のセンセーとか、地元新聞で有名なアイドルとか何から何まで自分の知る人間がいないってことだ。 孤独。言いようのない恐怖が身を包んだ。竜騎士の‘ジャンプ’より怖いものを、まさか24時間以内に体験するとは。
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