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「スサノオさん……」
母親の方がそう言うのが聞こえた。なんだろうかと思い、そちらを見やろうとした。その時、頬に何かが伝わった。
「えっ……? あり? ……なんでだ……」
涙だった。今まで、何が起こったって泣くことなんて一度もなかったのに。
「っかしーな。クソ。止まれ止まれ」
止まらない。ポロポロと頬を雫が伝わっていく。
両親は何も言わなかった。ただただ申し訳なさそうに、沈黙を守っているようだった。
それがいたたまれなかった。
「……なんか、そうだ。そう! あれだ。一日で色んなことが起こっちまって、頭が追いつかないんだわ。それで、どうやら目が故障したんだな。ハハッ、情けねえわホント。ちょっと夜風に当たって、落ち着いてくる」
母親が何かを言おうとしたが、父親がそれを静止した。その配慮に感謝しながらも、それがなんだか余計に自分を惨めにさせたような気がして、とにかく目元を見られないように立ち上がって居間から立ち去った。足早で去るスサノオを、両親はその背後を目で送った。
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