旅立ちの塔

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(なにやってんだ俺は……) 月明かりが照らす夜の下、スサノオはただただ空を眺めていた。夜だというのに青々しく、けれどダークさが素晴らしいまでに混じり合い、これほど心打たれる夜空を見たのは初めてだった。心の中は相変わらずぐちゃぐちゃで、こんなに清々しいものではないというのに。 (綺麗だな……) そう思う反面、自分がいつまでこの気持ちを維持できるかが不安になった。今でこそ唐突なことが次から次へと起こって、事態を受け止めるだけで精一杯だが、少し時間が経てば、優しく介抱してくれたヨミの両親に怒鳴りつけるかもしれない。てめえら、なんで俺を異世界なんかに呼んだんだ! 俺を元の世界に戻しやがれ!! と。 (ってそういや、……) 自分が怒った時の想像をして、気づいた。どうしてヨミは自分を呼んだのか。そして、どうして呼べたのか。過去に二度現れたドラゴン像。二つとも、世界が危機に陥ってる時に現れたとか。 (じゃあ、今も何かの危機が訪れてるってことか……?) そして、ヨミはその危機をなんとか取り除きたくて、自分を呼んだ……。 (一見筋は通っているように思える……) スサノオはゆっくりとヨミの家の庭を回り始めた。やはり、何か考える時は歩くのが一番だ。ただただ考えるためだけに、意味もなく歩く。これがスサノオのものを考える時の癖だ。
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