旅立ちの塔

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だが、スサノオが家に戻ってみると、事態は急変していた。 母親が慌ただしくこちらに寄ってくる。 「スサノオさん! ヨミを見ませんでしたか!?」 「ヨミをか? いや、見てねえけど……」 「こんな時間に……あの子一体どこへ……」 落ち着きをなくしたヨミの母親を見て、何か嫌な予感がした。正体不明の悪寒に思わず身を震わせる。 「道場にいないのか?」 「主人がヨミのいる道場に行ったら、あの子ったら窓を外してどこかへ行ってしまったみたいだったの。家中探したけれど見つからなくて、ここ近辺にいるはずだって……主人は探しに行きましたわ」 ヨミが逃げ出した? そのわんぱくさというか行動力には驚いたが、もっと驚いたのは窓を外してということだった。どうやって外したんだろうか。むしろそっちの方が気になる。 「とにかく、もう一度道場の方見に行ってやるよ。叔母さんは家の中をもっかい探しな」 「え、ええ。ありがとう。スサノオさん」 「スサノオでいいっすよ。じゃあ見てくる」 スサノオはダッシュでその場を駆け出した。靴を脱ぎ、廊下を駆け抜け、道場の入口まで走り去る。 入口は開けたままになっていた。広々とした中を覗き込んで、確かに一つだけ窓自体が取り外されているが分かった。窓枠のしたには、取り外した窓と工具箱、何本かのドライバーが置いてあった。
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