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「すげえ。やるなあアイツ」
何回か閉じ込められた経験があるのだろう。だから今度閉じ込められた時は、といったための準備と見た。思わず感心してしまう。華奢な体つきでひ弱に見えるが、芯はしっかりと持っているようだ。トストスと軽い音を立てながらスサノオは中にお邪魔した。
「ん……?」
道場には奥の方に掛け軸がかかっていた。上手すぎてなんて書いてあるのか分からないが、どうも見覚えのある文字だ。
(文字や言葉は同じか……)
ほっと息を撫で下ろす。もしかしたら自分は異世界に来たのではないかとまで思ってしまう。
だが魔法石云々かんぬんの話が頭をよぎり、またげんなりとする。どんなに似通っていてもここは違う世界のようだ。それを認めなければ。
掛け軸の下に目を移すと、何やらスリッパ掛けみたいなのが置いてあることに気づいた。傍まで近よってみる。
(スリッパ掛け……にしてはえらい仰々しいな。それにでかいし)
これはスリッパをかけて使うというよりも、刀をおくものではないだろうか。道場ならそれが納得がいく。
(まてよ……そういや、ヨミが叱られてる時は鞘に収まった妙な形の刀が置いてあったな)
なんだっけか。日本刀……っだったけか。今ではそれがポッカリとない。
(父親が持っていたのか……?)
一瞬そう思ったが、それはないなと否定した。父親が鍵を開けた瞬間、まず目につくのは自分と同じく窓枠のはずだ。そしてヨミが居ないということ。
その状況下で、わざわざ刀を取りにここまで来てから、娘を探しに行くわけがない。となれば、持って行ったのはヨミの方……。
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