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秋雨が、降る。
目印の大銀杏が、見えてきた。
ノラが、木刀の朽葉を銜えて雨の中駆け出す。
「あっし、姉御と一緒に、先に風呂の準備してきますね!!」
「そんな大袈裟な」
大して濡れてもいないのに。
だが朽葉の反論は的確だった。
「主様が良くても綸様が風邪を引いてもいけないよ」
「むう」
「それでは、先に行っていやす!!」
見えてきた我が家に駆け込む式神二体。
綸がいよいよ引っ付いてきて、繋としては、何となく嬉しいような、歩きづらいような、それからはそんな家路であった。
玄関先で、濡れた靴を脱いで、買い物を台所に置く。
「綸、着替えはあるんだよね?」
「はい。取り寄せてあります」
本当、恐るべし魔術である。
「じゃあ、先に風呂入ってきなよ」
「…家主たるお兄様が先です」
「俺が、綸が先だと言ったら先なの」
こうでも言わないと、綸は入ってきてくれない。そういう風に理解している繋であった。
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