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まあそんな、彼女のいない俺は、暫しこれからも、この籐籠の中身にはご厄介になるであろう。
実にありがたいことである。
「お兄様、お風呂、頂きました」
何分くらい経ったろうか。
女の子にしては早い風呂上り。閉められた襖の外からの声に、繋も返事をする。
「ありがと。俺も入るから」
「はい。お兄様、ありがとうございます」
遠ざかっていく足音に応じて、繋も立ち上がった。
風呂である。
まあ昼間だし、夜にまた沸かしなおして入る感じだろう。今回は適当に烏の行水な感じで浴びてくればいい。
この家の風呂は、総檜作りの、またご立派な風呂なのである。
アパートに入っていた頃の自分は、狭いユニットバスで窮屈な思いをしていたから、実に広くて気持ちのいい風呂はありがたいのであった。
「―――」
広い湯船に、浸かりながら、思う。
猶予期間は、一日か、数日か。
きっと外の雨の止む頃には、戦いは始まっているだろう。
戦いは、情報戦だ。
敵は雨宮。綸を縛り、俺を言いなりにしようと目論む輩。
今夜あたり、綸に詳しい話を聞こう。
辛いかも、知れないけれど。
それが俺達に出来ること。
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