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ゆっくりと扉を閉め、職員室に向かって歩く。
「あー…もう嫌だ」
初めの挨拶とか、自己紹介とかはすっごく大切だと僕は思う。
最初の方は順調に進んでいたと思ったが、相田健一君に注意した途端クラス全員の目の色が変わった。
「……ハァ」
この学園はあまり評判が良くないことを僕は知っている。
強姦やいじめがほぼ毎日あり、僕達教師はそれを見て見ぬフリをするのだ。
なぜ見て見ぬフリをするのか、それにはちゃんとした理由がある。
ここ、阿修薔薇学園は金持ちの子供が通う学校。所謂お坊ちゃま学園である。
庶民も一応いるが、皆頭が良く、成績は常に上位をキープしていないと退学にされてしまう。
見て見ぬフリをするのは、自分の立場を考えてのこと。もし強姦、又はいじめをした子を呼び出し叱りつけたら、何をされるかわからない。
今の仕事を退職させられるかもしれない。親の会社を潰されるかもしれない。
内心冷や冷やしながら生徒の顔色を伺い、気分を損ねないようにここの教師は努力しているそうだ。
「…だけど、まさかあれだけで嫌われるとは予想もしなかった。」
僕は相田健一君の件を思い出し、また溜め息を吐いた。
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