2149人が本棚に入れています
本棚に追加
/328ページ
Ⅰ
魔法をその身に宿した者を養成し、育てる。
その教育機関が集中している場所がここ、魔族特区。
魔族、と言えば聞こえが悪いがこれは決して悪い意味ではない。
魔力を持つ者は政府に登録する事を義務付けられ、聖騎隊に入りたいと願う者は
有志でこの魔族特区に集められる。
家族でそのまま引っ越す事も可能だが、大半の場合が本人だけが集まってくる。
当然、中にはホームシックになる者も少なくなく、そういった者達の精神的負担を減らす為に、魔法を持つ人達はみんな一つの家族なんですよ~という意味で敢えて“魔族”という言葉を使っている。
そんな魔族特区の街を、
「だああぁぁぁっ!? 何なんだよ!?」
御剣 剣輔は全力で逃げていた。
「あぁもうちくしょう!もう意味わからん!」
我ながら変態じみた叫び声だと思いつつも、御剣はその足を止めない。
五人。
それが今日の“相手”だった。
もうかれこれ三キロ近く全力で逃げているのに、まだ五人。
この五人というのが女の子だったら、ちょっと嬉しかったりもするのだが、無論そんな訳もなく。
後ろを見ると、
「待てやゴラァァァァァ!」
いかにも、な男がそれも五人。
両手に火の玉やら雷やらを迸らせながら追ってきたら、それはそれは嬉しくない。
“今の状態”の御剣が相手をしたって二分と持たない。
の前にまず『無理』だ。
薄汚れたポリバケツを蹴り飛ばして、不吉な象徴でもある黒猫(縁起でもないときに現れる)を追い払うように、御剣は走る。
最初のコメントを投稿しよう!