桜木ケント

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「この時期は寒いよね?」 戸惑う僕をよそに彼女は話しかけてくる。 「寒いけど、気持ち良いから」 本当は気持ち良くもなんともない。ただの不登校で、居場所がないだけ。だけど、彼女があんまり可愛くて、いろいろと突っ込まれそうな会話は避けた。 「そうだよね。この時期って寒いけど、なぁんか良いよね。このピンっていう感じの冷たさとか、私大好き!」 彼女はそう言うと立ち上がり、両手を高く上げ背伸びをする。 「あっ。そうだ!」 彼女は再びベンチに腰を下ろすと、暖かそうなコートのポケットから、缶コーヒーを一本取り出した。 「コレを飲もうと思ってベンチ探してたんだ」 そう言って缶コーヒーを一口飲んだ。
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