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ボロボロのアパートと、隣に据えられた鉄格子の階段を上る、201号室が俺の家だ。
カギを取り出して施錠を解き、扉を開けてた、殺風景で寒々とした玄関に通路、見慣れた光景に、特に感慨もなく、進み、敷いたままの布団に潜り込む。
着替えも、晩飯もいらなかった。ただ、ただ、布団の中に潜り込んで、時間が過ぎるのを待っていよう、明日になれば、惨めさも、やるせない気持ちも消える、明日だって、仕事なのだ、眠ろう、休むんだ。
仕事なのだけれど、特にそんな日は、眠れない、目だけが異様に冴えて、眠ることを拒否する。
羊を数えても、瞼をきつく閉じても、結果は同じだった。
もぞもぞと、布団から這い出して、電気をつける、眩しい光に目を細めつつ、そのまま、胡座をかき、殺風景な部屋の片隅に置かれた、写真立てを見てしまった。
「………ちくしょう」
この日だけは、見ないようにしていたのに、幾度も仕舞おうしてなんだかんだと、そのままにしてしまっている、その写真。
初めて、人を好きなり、付き合い、そして、永遠のお別れをした相手。
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