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「はい、これ」
「…ぇ?」
「宿題…、数学のでしょ…?」
「ぇ、あ…貸してくれるの…?」
私は返事の代わりに頷いてみせる。
「……」
「早く、受け取るなら受け取って」
「……ありがとうな宮沢!!」
「…………別に、宿題忘れた相田君の尻拭いをしただけだから…」
「ホントすいません!」
「分かってくれたなら…いい」
良かった…と心から安心したような相田君の表情。
こういう時、どうしていいか分からなくなる…
その時だった。
「おーい柊!」
どこからか相田君を呼ぶ声が、どうやら彼の親しい友達が教室に着いたらしい。
「?…なしたー?」
「なしたー?じゃなくてよ!…担任がお前に用あるってよー」
「えぇ!??」
「なーにしたんだよー(笑)」
教室の端から端で飛び交う会話を横目に、私は再び視線を窓の向こうに戻す。
今は丁度1年生の夏を迎えてる私たち。
ここの高校は丘の上に建っているせいか、心なしか日差しが眩しい。
「……」
「おー宮沢、ごめん俺職員室行ってくるわ!」
「……」
「…宮沢…?」
「……ぁ、分かった、いってらっしゃい…」
「ん、じゃーなー!」
手をブンブン振りながら教室を颯爽と出ていく相田君。
少し振り返そうか…と思い持ち上げた腕は、途中で動きを止めて、また机の上に戻った。
そしてまた、視線は窓の外へ行く。
「……」
景色。窓の向こう側。
私は、
それをただひたすら
無感情に見つめていた…
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