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「彼氏は居ますかー?」
突然、そんな質問が飛ぶ。
少し戸惑っているようだったけど、照れながら、口を開いた。
その小さな、可愛らしい口からは衝撃の言葉が飛んできた。
「えっと……建矢君が運命の人です」
そう言うと僕の方を指差す。
んー、後ろに誰か居る?いや、馬鹿雄星だけだね。
このクラスに僕以外にタテヤって居たっけな。
あ、そうか。武田鉄也。略してタテヤね。
……はは、全員僕見てるよ。
「皆さん、彼女の彼氏は武田鉄也さんらしいですよ!」
「滝宮建矢君ですっ!」
「僕の名前を呼ばないでくれよ。第一、今日初めて会ったんだし!」
「あの日の夜のこと……忘れた?」
「無いものを思い出すとか、ただの妄想癖野郎でしょそれ!」
立ち上がり、ヒートアップしているところでゆきちが僕の手を引く。
彼の方を見ると、「痴話喧嘩は止めよう…………」と言われた。
誰が愛し合うんだよ、あんな変なのと。
「例え付き合っていたとしとも今この場で別れてやるよ!」
「一方的に突いて来たのは貴方じゃない。あの日は無理矢理…………」
「建矢テメェ!!」
「誤解だっ!」
雄星が僕の制服の衿を掴むと同時に、男子からのブーイング。
クスクスと笑う厨二っ子。もう楽しんでるだろ、アイツは!
「と、まぁ彼はただの幼なじみなので気にしないでください」
「とのことだ。時間も時間だし、とりあえず……そうだな、そこ座ってくれ。空いている所に」
僕の隣。ゆきちは窓側だが、逆の方を指差す。
不登校の子の席で、もう辞めたらしいけど。
なんでそこをチョイスするんですか、先生。密に選ばせたら多分僕から一番離れるけどね。
それで良いのに。
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