果てなき設定

2/9
前へ
/16ページ
次へ
『目覚めの時間です』 「………………頭が痛い」 妙な声で、僕は上半身を起こす。 うん、自宅。 現在潜り込んでいるベッドの隣にある、勉強机の上に設置された目覚まし時計を見る。 まだ、5時。なんだなんだ、やけに早く起きてしまった。 『だから目覚めの時間なんです。さっさと顔を洗ってきてください』 本当に何なんだ。時計が喋ってるぞ。 ……はい? いや、僕の目覚まし時計にそんな機能はない。 設定した時間が来ると、ジリリリリと古めかしい音が鳴るだけ。 不思議に思った僕は、尻を上げその時計に手を伸ばす。 『良いから顔洗えって言ってんだろチビ!お前は今日から色々目覚めんだよ。理解したか?話は以上、敬礼!よし、行け』 敬礼、と言われた瞬間思わずそのポーズを取ってしまった。 やはり、声の主は目覚まし時計。訳は分からないが、女の人が話している。 初めは清純そうな声だったのに、段々と荒々しくなっていった。もう嫌だこんな目覚まし。 「はぁ…………」 誰が悪戯したのかは知らないが、時計は捨てよう。 完全に目も覚めた僕は、自室から出る。 「建矢!出てきちゃダメ……クッ、軍曹!」 「相変わらず隙はない、か。へいトム!」 「OK」 …………。 いやぁ、訳が分からない。 名前を呼ばれた僕は、再び部屋の中に入る。 よし、整理しよう。 僕は滝宮 建矢(タキミヤ タテヤ)。サラリーマンの父(44)と、パート通いの母(45)を両親に持つ極一般的な高校二年生。 変な目覚ましでたたき起こされ、部屋から出ると廊下の向こう側で我が母、友子が刃物を持ち、外国人の男と軍服のオッサンと戦っていた。 ……なるほど、変な夢だ。 「ったく、夢なら適当に、いつも通り行こう」 再び部屋を開ける。 目の前を、ナイフが通りすぎる。 …………。 ヘイヘイヘイ、自分が自我を持ってる夢とか稀だね。 「チェックメイト……!!」 「やらセマせーン!」 良いガタイの、片言の日本語を使う外国人が軍服のオッサンを抱え、逃げていく。 母は冷静に、外国人が逃げた方向に黒光りした何かを向ける。 じゅ、銃?マイマザーは一体何をし出かすのだろうか。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加