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『目覚めの時間です』
「………………頭が痛い」
妙な声で、僕は上半身を起こす。
うん、自宅。
現在潜り込んでいるベッドの隣にある、勉強机の上に設置された目覚まし時計を見る。
まだ、5時。なんだなんだ、やけに早く起きてしまった。
『だから目覚めの時間なんです。さっさと顔を洗ってきてください』
本当に何なんだ。時計が喋ってるぞ。
……はい?
いや、僕の目覚まし時計にそんな機能はない。
設定した時間が来ると、ジリリリリと古めかしい音が鳴るだけ。
不思議に思った僕は、尻を上げその時計に手を伸ばす。
『良いから顔洗えって言ってんだろチビ!お前は今日から色々目覚めんだよ。理解したか?話は以上、敬礼!よし、行け』
敬礼、と言われた瞬間思わずそのポーズを取ってしまった。
やはり、声の主は目覚まし時計。訳は分からないが、女の人が話している。
初めは清純そうな声だったのに、段々と荒々しくなっていった。もう嫌だこんな目覚まし。
「はぁ…………」
誰が悪戯したのかは知らないが、時計は捨てよう。
完全に目も覚めた僕は、自室から出る。
「建矢!出てきちゃダメ……クッ、軍曹!」
「相変わらず隙はない、か。へいトム!」
「OK」
…………。
いやぁ、訳が分からない。
名前を呼ばれた僕は、再び部屋の中に入る。
よし、整理しよう。
僕は滝宮 建矢(タキミヤ タテヤ)。サラリーマンの父(44)と、パート通いの母(45)を両親に持つ極一般的な高校二年生。
変な目覚ましでたたき起こされ、部屋から出ると廊下の向こう側で我が母、友子が刃物を持ち、外国人の男と軍服のオッサンと戦っていた。
……なるほど、変な夢だ。
「ったく、夢なら適当に、いつも通り行こう」
再び部屋を開ける。
目の前を、ナイフが通りすぎる。
…………。
ヘイヘイヘイ、自分が自我を持ってる夢とか稀だね。
「チェックメイト……!!」
「やらセマせーン!」
良いガタイの、片言の日本語を使う外国人が軍服のオッサンを抱え、逃げていく。
母は冷静に、外国人が逃げた方向に黒光りした何かを向ける。
じゅ、銃?マイマザーは一体何をし出かすのだろうか。
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