8人が本棚に入れています
本棚に追加
「……奴等が『セイナ』に気づく前に、育てましょうかね」
「セイナ?」
「こっちの話しよ。ところで、これから敵に襲われるかもしんないけど、特訓する?」
「うんにゃ、なんか実感湧かないっていうか、まだ夢見てそうな気がするんだ。今日一日考える」
「了解。じゃあ知り合いに見張っといてもらうわ。沢山居るから」
母さんみたいなのが、ってことね。
僕は頭を抱え、部屋に戻った。
―――
7時48分、僕は家を出る。
テレビを見て、45分になればリビングから出る。
それからゆっくり外出までの作業。
庭に置いてある、もう数年前から使っている古いシルバーの自転車に鍵を差し込み、押す。
僕は一戸建ての自宅を後にすると、いつもの道を漕いで進む。
「…………ちょっと!」
「はい?」
後方から、誰かが来る。
声の主は、女の子。
思わず返事をしてしまうが、横に並んだその子は明らかに僕に話しかけている。
左目に眼帯をし、右腕に包帯を巻いた黒髪ロングの子。
もう何を言うまい。ただの厨二病だろう。
「私と……一緒に来て」
「うし、帰ろうか」
面倒だったので、足を延ばし自転車を蹴り飛ばす。
キャッ、という声と共にガシャッ、という音が聞こえる。
ちらと見て、再び前を向く。
よく見れば同じ高校の制服を着ているね。違う学年かな?知らないや。
でね、こういう厨二病にはちょっとキツいことした方がね、マトモに戻る。
何さ、朝から色々あってどんより気分の僕に話しかけるのが悪いんだよ。
そうに違いない。
「私と一緒に…………来てと、言ったのです!」
うわ、走ってきたよ。妙に速い気もするし。
アレかい?学校のクラブで黒の組織みたいなの作ったから入れってのでしょ?
まったく、困るよ。
僕は速度を上げ、突き放そうとする。
「人の話しくらい……聞いてください。相棒なんですから!」
「訳分かんないよこの子!」
またいつの間にか横並びになってるし!
クッソ、こんなの本気で関わりたくないよ。
最初のコメントを投稿しよう!