果てなき設定

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「そういやさー、昨日山岡が事故って入院したらしいなぁ!」 雄星が相変わらずのテンションでそう言う。扱いの件はどうでもいいらしい。 そうだね、山岡この二年五組の担任の山岡だね。 …………。 ちょい待てこら。担任じゃねーか。 教師、一人来れない。教師、一人来る。 「そんで、今日変わりに来るらしいぜっ!深下が担任になって、副担任をその教師がやるとか。そこは大して変わんねーけどな」 うっせぇ、副担任の話しはどうでもいいんだよ。 問題はアイツかどうかだよ。蜜だっけ?蜜 氏得。ミッシェル、ねぇ。 「でさー、来るんだろー?転校生がさぁ」 絶対に低血圧だろって感じのゆきち。 転校生?そっちは気になるね。 しかし、次のゆきちと地味きな静岡君の言葉で僕は拳を握りしめる。 「で、どんなのだったんだよー」 「可愛い女の子だったよ。ロングの、色白で眼帯付けてた」 「…………どうやら今日、僕が初めて学校を早退する日になるようだね!!」 席を立ち、鞄を持つ。 しかし、勿論のごとく止められる。 雄星が僕の腕を掴み、待て待てと制止する。 「ええい、離してくれ!僕は世界の平和をだね。守らなきゃならないんだ!!」 「わけわかんねーっすけど?!今日のお前どうにかしてんぞ!」 「どうにかしてんのは君達だよ!とにかく僕、帰るから!帰るから!帰るもんっ!」 「可愛い子ぶんじゃねーよ。お前の女子からの支持率が上がるからそれ!」 言ってることはよく分からないが、離してくれそうにない。 しかし、不意に委員長が近寄ってくる。 委員長の、秋 渚(アキ ナギサ)さん。彼女は眼鏡系女子。 眼鏡がリミッターだとか、外すと可愛いとか、外すと化け物になるとかそんな噂がある。 よく居そうなでこっぱち。眼鏡を外すと可愛い、多分。外さなくても可愛いと思うけどね。 「滝宮君。時間があるし、少し手伝ってくれない?そこの、上の図書室に持っていくように頼まれてるから」 「出たぞ、委員長の人使いの荒さが!」 「黙ってくれない?眼鏡を外すわよ」 『なにぃ!?』 クラスメイトの声が重なる。勿論僕のも。 ともかく、雄星は手を離してくれた。ただ、教卓の上にある数冊の本を持って行かなきゃならなさそうだけど。
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