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後方の親蜘蛛はまださきほどの男を食うのに夢中のため、こちらに迫る気配はない。それでも子蜘蛛がこちらに迫る気配をカサカサという気味の悪い足音とともに感じていた。
「はぁ、はぁ……!」
さっきの男の二の轍を踏まぬように走ったまま僕は腕輪を見る。
――落ち着け
子蜘蛛の足の速さは親と違って精々自転車をゆっくり漕いでいるといったところだ。全速力で走ればギリギリ逃げられる。
「オラァ!」
大きな爆音と破壊音が響き渡る。今度は赤い銃を持った男が子蜘蛛たちをそれで葬っている光景が見えた。
形状は剣だけじゃないのか?
見たところ、他にも腕輪を武器に変えることに成功した者がいるようだ。
「? ――っ」
一瞬、足元で妙な感触がした。何かと思ったら子蜘蛛の死骸だ。産まれたばかりだからか、まだ甲殻が柔らかくて踏んだだけで簡単に潰れてしまった。
「……なるほどね」
後方から迫る子蜘蛛
僕は足を止めてすぐにその場から方向転換した。
距離が迫り、子蜘蛛が飛び掛かって僕を食べようとした。
「はぁぁぁぁ!!」
左腕の腕輪を横殴りに振るう。
それだけでまるで水風船を叩き割るような手応えがして、子蜘蛛は体液をまき散らしながら節足が取れた。
更に他にも迫ってくる子蜘蛛の腹を思い切り踏みつけると、プチュッと気味の悪い音と共に潰れて動けなくなった。
――よしっ
確信を持った。子蜘蛛程度なら、あの武器が無くても対処できる。
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