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あまりにも強い力に抵抗も虚しくそのまま蜘蛛に引っ張られて床を引きずられていく。
――グオォォォォォォォォォ!!
そして僕を引っ張ったまま蜘蛛は次の標的を絞ってその方向に向って行く。
おかしい。その方向には人が一人しかいない。
狙いを付けられている男も蜘蛛がどうして迫ってくるのか理解できずに棒立ちだ。
「馬鹿っ! 避けろ!!」
「……え?」
僕の叫びが届いた頃にはその男は蜘蛛の体当たりを受けて身体が宙に舞いあがった。アレは即死だ。
そう思っていたらまた蜘蛛が糸を出してその男の身体に付着させる。男の死体が僕のすぐ横で床に引き摺られる光景が見えた。
「くっ、ッ!!」
そしてまた同じように、人が少ない方向に向かって走り出したと思えば、そこにいた一人だけを狙った動きを見せ、そいつが体当たりを避けたら糸で捕まえるという二段構えを取る。
そうか、こいつ……!
「子供を殺した相手を狙ってるのか!」
この今までの傾向とは違う動きを見るに、間違いない。
虫の中には体液にフェロモンが混じっていて、コイツが自分を殺したのだと仲間に報せる種がいるという。
それと同じ習性がこの蜘蛛にはあり、体液を体にたっぷりと付着させてしまった僕や他の者が狙われるのはそのためだ。
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