3750人が本棚に入れています
本棚に追加
――確か
「夏草や」
――僕、何故かこの俳句が好きだった。
「兵どもが」
――他にもいろいろ俳句はあるけど、これが一番好きだった。
――だから、記憶がなくなってもちゃんと覚えてる。
「夢の跡」
ウィンドウに“パスワード認証”という文字が見え、僕の腕輪が光を放った。
左手に確かな感触を覚え、僕はそれを振るう。
――ピッ
微かな手応えだけで、僕の足に付着していた糸が呆気なく切れた。
「くっ、あっ、がっ!!」
僕はバランスを崩して床の上をゴロゴロと転がりまわる。
――グオォォォォォォォオッ!
僕が逃げたことを感じたのか、蜘蛛が足を止めて僕に標的を絞ってくる。
「あ……クッ……!」
痛みを我慢して立ち上がり、僕は左手にある紫色の光沢を放つソレを握り締める。
「ふぅぅぅ……来いッ!!」
蜘蛛に向かって僕は叫び、それに呼応するように蜘蛛は突進してくる。
――グオォォォォォォオォ!
雄叫びと共にこちらに迫る蜘蛛
その迫力に気圧されそうになりながらも、僕は狙いを絞る。
最初のコメントを投稿しよう!