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そもそも……
「…………僕、誰だ?」
「は? …………ん?」
僕の近くにいた赤髪の少年が僕に変な奴を見るような眼差しを向けたが、その表情はすぐに困惑に変わった。
それが波紋のように広がり、この場にいた全員が首を傾げたり、困惑したりしている。
「なんだこれ……! 自分の名前が思い出せねぇ!」
「嘘……わたし、誰なの?」
やっぱり僕だけでなくこの場にいた全員が自分のことを思い出せないのだろう。
混乱のあまりに泣き出す者まで出てくる始末だ。
《皆さんの記憶は一時的ではありますが、封じさせてもらいました。
知りたいのなら、まずは生き残ってください。
……そうしないと……ふふっ》
天の声(適当に命名)が何故か含み笑いをした。
「ぎゃあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
「「「ッ!!」」」
突如として響き渡ってきた悲鳴に全員がそちらに顔を向けた。
――ゴリッ、バキッ、グチャッ!
「痛い痛い痛い痛い痛い痛いイタイイタイイタイいたいたいたいたいたいたい!!!!!!!!!」
「…………」
僕はそこに広がる光景に言葉を失った。
少年が、その身体より遥かに巨大な蜘蛛に腕をかじられていたのだ。
蜘蛛の強靭な顎は、そのまま生々しい音の中に硬質な音を交え、少年の腕を肘から先を食いちぎった。
「ぎゃああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ■■■■■■■■!!!!!」
少年の悲鳴とも言えない悲鳴がこの空間に響き渡った。
そしてまた天の声が、悲鳴に混じりながらもはっきりと耳に届いた。
《死んじゃいますよ?》
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