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それが何であるのか?
そう思考を開始しようとしたところで蜘蛛が方向転換をしようとしている。
――まずい!
周囲の人間で動き出す者がいた。
それに釣られて動くものも出る。
「……よし!」
敢えてワンテンポ遅らせ、人の少ない方向へと僕は移動した。
そして予想通り、あのデカい蜘蛛は人が多い方向に向かって移動を開始したようだ。
さきほどの間に結構な人数がやられただろう。
この距離からではよく確認できないが、黒い床に赤い汚れ広い範囲に存在するあたり、一〇人は軽い。
「はぁ……はぁ……!」
この状況は長くは続かない。
わかっていることは、あの蜘蛛は人数が多い方向に動く。
そして僕たちにはあの蜘蛛と戦う手段が与えられているということだけだが……
「……これ、しかないよな?」
僕は左腕に着けられている手錠のようなフォルムの腕輪に視線を落とす。
その手段があるとすれば、間違いなくこの腕輪が重要なファクターのはずだ。
「おい……あの蜘蛛、なんか落としたぞ?」
誰かが震える声でそう言った。
この状況でなんだと思ったが蜘蛛が通った道に何か真っ黒な球体が落ちていた。
なんだ、アレは?
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