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この状況での黒い球体の出現
これがいったい何を示しているのかわからない。
「おい! アレの中にきっと武器が入ってるんだ!!」
僕の近くにいた誰かがそう叫んだ。
「は?」
なんだと思ってそちらに顔を向けると、最初の時点で僕の近くにいた赤髪の男が大声でそう叫んだのだ。
――何を馬鹿な?
そう思った時、例の黒い球体に向かって何人かが走り出すのが見えた。
まさか、この男の言葉を信じたのか?
そう思って僕は赤髪の男の方を見た。
赤髪の男はまるで餌に群がる小動物を見るかのような愉快な表情を浮かべていた。
――コイツ……!
僕はすぐに黒い球体の方を見た。
そして、その瞬間に微かであるが確かに黒い球体が独りでに動いたのを確認した。
「待て、それは――」
僕はすぐに叫んだが、それでも遅かった。
黒い球体が割れたかと思えば、その中から大量の小型の蜘蛛が飛び出してきた。
「ぎゃああぁぁぁぁぁぁ!」
「いや、いやぁぁぁぁぁ!」
あの黒い球体は蜘蛛の卵だったのだ。
それに近づいていた者たちが産まれたばかりで空腹の蜘蛛の子供に生きたまま喰われている。
「あっちゃー……やっぱり卵だったか……」
赤髪の男の言葉に、僕は目を見開いた。
「ッ……お前……それに気づいててわざと……!」
「ん? この状況なら最初にそう思わね?」
何の悪気も無く、ケロッとした様子で男は頭の上で手を組んだ。
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