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拳を固く握り締め、怒りを抑えようと努めたが僕は男に対するその感情を押さえつけられなかった。
「ふざけるなっ……!」
この状況でいちいち争っている暇はないが、それでも僕はそう訴えずにはいられなかった。
「ふざけてねェよ。
だってアレが武器の可能性も無くは無かったし?
もしもそうだったらこのままあの化物に食われちまうから誰かが確かめねぇといけな――お、やべ」
言葉の途中で男はまた走り出した。
言うまでもない。蜘蛛の数が増えたのだ、人が少ないとはいえ、こちらにやってくる。
周囲の状況を確かめ、僕はすぐに人の少ない方向に走り出す。
「お、気が合うねぇ?」
腹立たしいことに、赤髪の男は僕のすぐ横を走っていた。
「っ! なんでこっちに来るんだ!」
「だってあの蜘蛛、人の多い方向に向かってくるじゃん?
だったら相棒と同じように動くのが常套手段だろぉ?」
「誰が相棒だっ!」
赤髪の男は厭らしい笑みを浮かべたまま僕と同じ方向に移動し続けてくる。
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