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とにかく今は走るのをやめる訳にはいかない。
前方方向以外から悲鳴や助けを呼ぶ声が響く。
「だ、誰か助けっ――あぎゃああぁぁぁぁ!!」
そう思ったら、すぐ背後から悲鳴が聞こえて来た。
「おー、やべぇやべぇ……アレ、さっきまで相棒の後ろについて来てた奴だ」
赤髪の男が走りながらそんなことを呟いた。
「……なんだと?」
僕は一旦足を止めて背後を見た。
するとどうしたことか、まるで僕を先頭にしているかのように何人かの者たちが僕について来ていたのだ。
「相棒が一番この中で冷静に動いてるから、ある程度賢い奴は勝手についてくるもんさ。賢い奴に状況判断を委ねれば、すぐに死ぬことは無いからな」
「でも」と、赤髪はやれやれとでも言いたげな表情を浮かべた。
「それも潮時だ。相棒が上手く動き過ぎるから馬鹿どもに目を付けられた」
その言葉通り、生き残っていた奴らがこちらに集まり出した。
「駄目だ! 一か所に集まったら狙われるぞ!!」
僕は精一杯にそう叫ぶのだが、誰も僕の話を聞いてくれない。こちらに向けって走ってくる者が増えるほど、数の増えた子蜘蛛に、一番厄介な親蜘蛛がこちらに迫る。
「じゃあな」
赤髪は僕の肩を軽く叩いてすぐにその場から逃げ出した。
アレについて行くか? しかしそれではこの集団がついてくるだけだ。こいつらがいる限り、僕の生存確率は著しく低くなる。
「――ッ……腕輪だ! 腕輪にあの蜘蛛を倒す機能がついてるはずだぞ!」
僕がそう叫ぶと、他の者たちが一斉に自身の腕輪に視線を落とした。中には今まで腕輪の存在に気が付いていなかったとでもいうような表情を浮かべる者までいる始末
そして、ほとんど全員の視線が僕から外れた。
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