ある時この部屋で

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 アドレス帳を隅々まで見ていく。誰か頼れる人はいないかと探していると、一人の名前が目に留まった。  山鹿葉子。俺の唯一の女友達。あの子ならちゃんと説明を聞いてくれるはずだ。早速電話をかけてみる。朝早いけど起きているだろうか。  コール音が何回か鳴った後、 『もしもし伊原君?』 「や、山鹿、朝早くから悪い。時間あるか?」 『うん、平気だけど』 「今から家に来てくれないか?相談したいことがあるんだ」 『え、ええ?…うん、分かった。すぐに行くから待ってて』  少し戸惑ったみたいだけど、俺の必死な声を感じ取ってくれたみたいだ。山鹿の家は近いからすぐ来てくれるよな。電話が切れると、一気に安堵感が胸を満たす。 「電話?誰?」 「ああ、山鹿に助けを頼んだんだ」 ………………………え? 「おはよう」 「おわあ!?」  女の子が起き上がっていた。布団にくるまって座っているから大丈夫だが、それはそれでなんか目を向けられない。 「えっと、その山鹿さんって人なら助けてくれるんだよね?」 「あ、ああ…。てか今の状況わかってるのか…」 「うん。別に私はあなたに連れ込まれた訳でもないし、何もされてないよ」 「良かった…。なんかすげー安心した…」  とりあえず俺は捕まらずに済むみたいだ。
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