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「あ……」
自室から見える、赤い校舎。
今年の3月までいた、私のかつての居場所。
ようやく新しい学校に慣れてきたってときに見ると、ちょっと心が痛む。まるで心がまだあそこに留まっているよう。
ズキリと痛む胸を抑えつつ、ここからひと駅ある新しい学校へ向かった。
「おはよう」
教室に入って、川島くんが先に挨拶してきた。
「川島くんおはよう。金田くんは?」
「朝練だって」
まだ5月初頭だってのに朝練なんて忙しいなぁ。それに比べうちの部活は……。だめだだめだ、普通のと、うちみたいな特殊(?)ので比べるのはよくない。
「ねぇノート見せて」
私は宿題のノートを見せる。
「たまには自分でやってよ?」
川島くんはニコニコしながらノートを受けとる。
彼は進級してからついていけないことが多く、ちょくちょく私や金田くんに勉強を教わっている。ちなみにさっき私がノート貸したのは、彼が単に宿題やってないだけじゃなく、内容の確認も兼ねている(本人談)。
「ところで夏音ちゃん、部活うまくいってるの?」
彼が突拍子に聞いてきた。
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