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アホかこいつは・・・と呆れる兄さんの前でテーブルに両手をつき絶望を体現する。
「えぇそうですよ・・・行けばいいじゃないですか・・・他の女の所へ・・・!」
「いや何勘違いしてんのか分からんがただの会議だから」
兄さんの手にはもうカバンも握られていて、身だしなみもバッチリだ。
「あぁ、もうヤバイ。それじゃ、先行くよ!」
時計をチラ見するや否や、兄さんは玄関に走っていった。
バタン、と扉が閉まる音がして兄さんがこの家にいなくなったことを感知する。
ぐっと顔を上げた私は、まだ起きてこない父のために食パンを袋ごと乱暴に置いて自室に駆け込んだ。
*****
「やべー、間に合うかな」
視界の隅にデジタル時計を表示させながら、学校への道を全速力で駆ける。
アビを使うための手術は妹と俺、両方受けている。小さい頃だから記憶はあんまりないけど。
距離にして半分くらい走ったところで、突然耳元でアラートが鳴った。
後方から何かが高速で迫っていると、そういう内容だった。
「兄さあぁん!」
瞬間、衝撃。
アラートは警告からFailedの文字へ。何が失敗だよ。
「お前、父さんの朝食は!?」
この短時間で作ってきたとは考えにくい。
「食パン置いてきました!」
可哀想に。悲しげな顔でバターを求め冷蔵庫を開くのだろう。
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