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「ふむ、見えないのか。彼は僕が感得したから、僕だけにしか見えないのかもしれないな」
「そういえば、昨日の話題はそのぬらりひょんだったよな?」
いっちゃんが言うと、にーこが頷く。
「先輩お得意の中途半端なお話だったね」
「僕がぬらりひょんの話をしたのかい?」
「はい。先輩はよくそういうどうでもいい話をします」
「『妖怪畫談全集 日本篇 上』が妖怪の親玉説を唱えたんだよなー。つってもこれは完全に創作で、出版されたのは昭和四年で新しい」
「それで時々それを否定するように使われる『家に上がり込んで飲み食いをする』っていうのは実はそのさらに後、昭和四十七年の『いちばんくわしい日本妖怪図鑑』で出た設定なんですよね」
「でもそれを糾弾するのはお門違い。妖怪なんてのは所詮全部創作。後付け万歳――っていう話だったな」
なるほど、これでぬらりひょんが自信を喪失した理由がよくわかった。僕が知っていた知識を元に顕れた彼は、自分にそんな設定がないということに気付いてしまったのだ。それまで大将面していたのが一気に足元が崩れ去った。哀れ。
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