一人きり

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スポーツ選手や宇宙飛行士のように、たった一握りの人間しか就く事の出来ない職業は、人々に人気がある。 街に出掛けるだけでちょっとした騒ぎになり、行き付けのレストランではチヤホヤと持て囃され、子供たちは憧れ、サインをねだる。 幼い少年たちに、将来就きたい職業を聞けば、大抵の子供は「宇宙飛行士になりたい!」「スポーツ選手になる!」と答えるだろう。 ……だが、誰も、私のようになりたい、と思う子供は居ないだろう。 一握りの内の、更に一握りの人間に対しては……世界は掌を返すのだから。 希少すぎる存在には、人々は『憧れ』ではなく『恐怖』を覚えるのだ。 ……私という存在に恐怖を感じない人間も、中には居るだろう。 私を受け入れようとしてくれる人々も、もしかしたらいるのかもしれない。 だが結局、私は疎まれ、嫌われ、迫害される。 彼らは、初めの内こそ平等に接そうとするかもしれない。 しかし、彼らはその内、私に嫉妬の炎を向ける。 自分達が決して手に入れることの出来ない『能力』に対して。 『嫉妬』は『怒り』へと変わり、最後には『迫害』となる。 自分達の手に入らない物は、目の届かない所へと追いやる為に。 ……私には、『能力』があった。
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