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◇ ◇ ◇
典韋と名乗る少女が去ってからしばらくすると、再び部屋の扉が開いた。
「曹昂さん、起きてますか?」
控えめな声量で呼びかけられ、曹昂は部屋の入り口へと視線を向けた。
そこに立つ青年は、曹昂にとって見たこともない服に身を包んでいた。
「……貴殿が北郷将軍か」
あらかじめ典韋から「北郷一刀を呼んでくる」と告げられていた曹昂は、この青年が北郷だと予想した。
名前から察するに、北郷一刀はおそらく異民の出だろうと曹昂は考えていた。
そして部屋に入ってきた彼の顔立ちや服装を瞬時に観察し、彼が異民族であると確信するに至った。
はたして青年は頷き、自分が北郷一刀であることを認める。
「将軍って呼ばれるのはちょっとまだ慣れないなあ……」
将軍とか俺には似合わないような、などと呟きながら、北郷は寝具の隣にある椅子に座った。
「俺の名前を知ってるってことは、流琉……えっと、典韋からいろいろ聞いてたりするのかな?」
「ああ、少しだけだがな。私が貴殿に助けられたと聞いている。このような体勢で申し訳ないが、まずは礼を言わせてくれ」
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