天の御遣い

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曹昂が礼を述べると、北郷は照れたように首を振った。 「いえ、俺は当然のことをしただけですから。何があったのかは知らないけど、ひどい怪我をしている人を放っておくわけにはいきませんし」 そうか、と北郷の言葉に短く返した曹昂は、続けて疑問を投げかける。 「ところで、北郷殿はどちらのご出身だ? 見慣れぬ服を着ておられるようだが」 「あー。ええと」 歯切れの悪い北郷の返答に、曹昂は疑問符を浮かべた。 言いづらそうに北郷が口を開く。 「一応、ここでは『天の御遣い』ってことになってて……多分、地名を言ってもわからないんじゃないかと……」 「てんのみつかい?」 「ええ。とある占い師さんが、これから訪れる乱世に救世主が現れるとかいう予言をしたらしくて、俺がその救世主だってことになってます」 俺自身も詳しいことはわからないんですけど、と北郷は補足した。 曹昂にしてみれば、そのような二つ名で呼ばれる将軍が自分の父に仕えていたなどというのは初耳である。 そもそも、彼は天の御遣いという呼称を聞いたことすらなかった。
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